脳内農園  第二章・光をつぐもの 43

第二章・光をつぐもの 43

セリスたちにとって、どえらく都合の良い展開になっていますが、まぁ、それが運命に選ばれた英雄の定めだとでもとらえていただければいいかなぁ〜なんて。
運も実力の内っていう言葉もありますし。

それよりも、今回は奇襲に近い作戦ですので、またしても夜間行動です。
基本的に夜間は行軍しないとか言っといて、これですよ。

イザーク編では、結構ゲリラ的な戦いを展開しているとメノウは解釈しているので、(セリス軍はまだイザーク国民にとっての希望にすぎないのです)まだ軍隊らしい軍隊ではないのです。
前にSSの中で書いたとおりに、まだオイフェ(軍師)の能力を余すところなく使っているわけではありませんので。言いつつも、書いてる奴が奴なので、そんな差は表現できませんけども。
イザーク(一国)を取られて、やっと帝国軍はセリス軍が、とんでもない勢力であると再認識するわけですね。
で、ヤバいと思いつつも、レヴィンが頃合いをみて各地の反乱をあおるものですから、セリス軍ばかりを集中攻撃できないっちゅー背景があったりなかったり……。

帝国本土さえ守り切れば、地方を治める人間なんて誰でもいいっていう感覚が帝国軍内にあることも否めませんねぇ。
皇帝アルヴィスが、地方の一国を任せるという建前で、中央政権に口出しできないように有力貴族を体よく追い出した。と、メノウは考えちゃってますので。

「オレ達でできる事があるなら、何でも言ってくれ!」
 フィスの言葉を受け、若者は血気盛んに応える。
「ありがとう!!それじゃあ、他の人達にも声を掛けて、帝国兵を全員縛ってください」
 フィスは、ロープを用意するように言い置いて、他の家々を回るべく踵を返しかけるが、オイフェに言い付けられていた事を思い出し、慌てて付け加えた。
「帝国兵は、杖の魔力で眠っているだけですから、くれぐれも強い刺激を与えないようにしてください。彼らが目を覚ましてしまったら元も子もありませんから」
「わ……わかった」
 国土を不当に我が物とし、武力を以ってして自分達を虐げてきた帝国を、イザークの民達は一人の例外もなく憎んでいる。
 眠らされ、無防備な状態の帝国兵たちが、彼らの恨み辛みを晴らす絶好の対象となるであろう事は、誰の目にも明らかだ。
 しかし、そういう私怨からくる村民達による帝国兵への私罰は、決して喜ばしい事でも許される事でもない。
 積年の想いは確かにその行為によって一時は晴れるだろう。だが、後には怨恨が残り、その連鎖が来るべき将来で禍根となって、誰にともなくしこりが残るだろう。
 そのような事態を回避するために、帝国に名を連ねる者の罪は、公正な法の下で、公然と裁かれるべきである。
 その事を危惧し、オイフェはあえてフィスに言付けた。
 スリープの杖によりもたらされた眠りは、常のそれとは全く別のものであるという事を知りながら。
 村民達が、帝国兵に危害を加える事のないように。同時に、彼の言に抵抗の意を示すようであれば、ユリウスに再び魔杖を振るえとも。
 いつしか行方を見誤り、混沌としてしまったユグドラルに必要なのは秩序であると、知っていたから。

 フィスの指示に従って、村民達は帝国兵を縛りあげていく。
 生半可な縛り方では、訓練を受けた兵士なら、縄抜けすることなど容易であるからだ。
 慣れない作業ではあったが、人海戦術にものを言わせ、一刻とたたずに身動き出来ぬように緊縛された状態で眠りこける兵士の山が出来上がっていた。
「ご協力ありがとうございました!」
 目先の危険が取り払われ安堵するものの、根本的な解決が目に見えないためか、村民達は落ち着かず、フィスの次の言葉を待つ。
「夜明けには、セリス様が到着されますので、不安だとは思いますが、待っていて下さい」
 解放軍が到着するまで、自分達が守りますからと、フィスは今回の相棒を呼び彼らと顔を合わせさせる。
「お怪我をなさっている方がいれば、どうぞ、おっしゃってください」
 自分は杖使いであるからと、ユリウスは心持ちの晴れない彼らを気遣う。
 ガネーシャへの連絡も既に済んでいる。
 きっと今頃は、主だった隊が城を後にしているだろう。
 暗闇に乗じて、陽動、説得、救出とに分割された部隊が向かって来ている筈だ。
 だが、一つ気にかかることが生じてしまった。
 件のシュミットという男が、捕らえた兵士の中にはいなかったのだ。
 身にまとう軍服に、それらしい階級の者が見当たらなかった上、ヨハン公子とのやり取りを目撃したという村民も、その人物がこの場にはいないと証言したのだ。
 騎馬の数と、兵士の数はあっているため、村落内に潜伏しているわけでもないらしい。
 ならば、出会えるかもわからずに草原の空を急ぐより、確実にこの場所を目指す救出部隊を率いるセリスを待つ方が良いと、フィスは判断できないなりに考えて、待機していた。
 果たしてそれは、運命の女神が微笑みかけるかのように、解放軍にとって吉と出たのだったが。

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